欧米では今でもストーブと呼ばれているコンロの歴史

英単語でコンロは何というか!?・・・ストーブ!?

皆さん、料理で毎日使う「コンロ(焜炉)」を英語で言うと何というか知っていますか?はじめから言っておきますが、コンロ(konroとかconro)という英単語はそもそもありません。コンロという単語は和製英語ですらなく、純粋な日本語です。
ではコンロという日本語を英和辞典で引くとこのような単語が出てきます。欧米ではコンロは「ストーブ」なのです。

Stove(ストーブ):〔料理用の〕コンロ、レンジ【語源】ガスや電気が普及する前、stoveは暖房用だけでなく料理にも使われていたのconro-no-rekishiで。
Range(レンジ):〔調理用の〕レンジ、コンロ◆通例、ガスや電気で加熱する、同時に複数の調理ができるものを指す。
cooking stove(クッキング・ストーブ):料理用コンロ
kitchen stove(キッチン・ストーブ):キッチンのコンロ
gas stove(ガス・ストーブ):〔料理用〕ガスコンロ、ガスレンジ、〔暖房用〕ガスストーブ、ガスレンジ、ガス暖炉
gas range(ガス・レンジ):〔料理用〕ガスレンジ
kitchen range(キッチン・レンジ):調理用レンジ、かまど
charcoal stove(チャコール・ストーブ):七輪
cooktop(クック・トップ):レンジ台上面、流し台上面

アメリカでストーブ(stove)買いたいとお店で言ったらコンロ(cooking stove)が出てきます。アメリカでストーブを買いたければヒーター(heater)買いたいと言わなくてはなりません。ちなみにアメリカで今はやりのビルトインコンロを買いたければビルトインクッキングストーブ(built-in cooking stove)と言えばお店の人に通じます。これはかつて欧米で料理に使える薪ストーブを使っていた歴史があるからです。
これはいろいろ調べてみると、文明開化に日本が外国からガスコンロを輸入していた時期があって、この時期に輸入したコンロの一部は調理機能が付いているストーブである場合があったということが分かってきました。

コンロの誕生・・・コンロとは携帯「炉」のこと!?

日本語でコンロの定義を確認すると、コンロ(焜炉):江戸時代には焜炉とは運搬可能な調理用の炉をさしていました。言ってみれば、電話に例えると、「炉」はNTTの普通電話であり、「コンロ(焜炉)」は携帯電話ということになります。
日本であれば炉はかまどのことであり、欧米であれば炉は暖炉のことでした。これらの炉は基本的には移動できないものでしたが、欧米で起こった産業革命により生じたガスや電気という文明の利器のおかげで「持ち運び」ができるようになりました。これがコンロの誕生です。

  

初期のコンロ日本でも欧米でも持ち運びができない「炉」でした。

火を完全に囲んだ初期の粘土のコンロは中国の秦王朝(221 BC-206/207 BC)の頃から知られており、日本では古墳時代(3-6世紀)に現れたかまどとして知られているデザインに似ているものです。これらの炉は 前側の穴を通して木もしくは石炭をくべて燃焼されるタイプのものでした。いわゆるかまどは江戸時代(1603-1867)に開発されました。
ヨーロッパでは18世紀より前には、暖炉で木製燃料を使って囲いのない火で料理をしました。中世には腰の高さのレンガとモルタルの炉床と煙突が初めて現れました。それによりもはや火の前にひざまずいたり座ったりして食べ物を扱う必要がなくなりました。火は構造物の上でおこされ、調理は主に火の上につるされたもしくは五徳の上の大釜の中で行われました。熱は火の上の大釜を高くしたり低くしたりすることによって調節されました。
ヨーロッパのコンロ(ストーブ)は産業革命が始まった19世紀前半に誕生した
ヨーロッパで起こった産業革命によって石製の暖炉が鋳鉄製のストーブになっていき、それが小型化してキッチンに組み込まれていきました。この「ストーブ」は暖房と調理と両方の機能を持つストーブです。これがヨーロッパのコンロの誕生です。これは1820年のイギリスでの出来事ですが、日本に黒船がやってくる1850年頃にイギリスの大博覧会で世に知られるようになり、1880年年代にイギリスで広く普及するようになります。そしてこのタイミングはまさに日本で明治維新が起こってコンロが「誕生」する時期に合致するのです。

 

日本のガスコンロの出現はエジソンの発明(1882年) (明治15年)によって引き起こされた!

明治維新が始まった1872年(明治15年)に最初のガス灯が横浜にともり、日本人とガスとの付き合いは始まりましたが、最初ガスは日本人に元々照明用に利用されていました。明治時代初め頃の絵画を見ると、街の照明にガス灯が描かれているのが分かります。
しかし、1882年にアメリカのエジソンが、日本の竹をフィラメントに使用した電球を発明すると、簡便で安全性も高く、ガス管よりも導入が容易な電灯はガス灯に代わって照明の主導権を握るようになります。それと共にガス会社はガスを照明用ではなく調理用に使用するようになります。そしてこのころから日本は外国からガスコンロを輸入し始めます。これが日本におけるガスコンロのさきがけです。その他にもコンロ、グリル、オーブンをそなえたガスレンジ、今日のテーブル型コンロと同じ基本的形状のものなど、さまざまな製品を輸入していきました。
例:
コロンビア二口七輪(1904年)(明治37年)
英国フレチャラッセル社製ガスレンジ(明治後期)

 

ガスコンロの国産化の開始:大正時代に入るとガス器具の大手メーカーが相次いで創業

外国製のコンロの輸入は高価なため、庶民の手にはコンロは手が届かない存在でしたが、今では日本でメジャーとなっているガス器具メーカーがこの時期に相次いで創業しました。
1911年:株式会社パロマ創業
1920年:リンナイ株式会社創業
1930年:株式会社ハーマン創業

しかし、実際にガス器具製品が一般庶民に普及してくるのは昭和に入ってからです。ちなみにガス器具大手の株式会社ノーリツの創業はずっと後で戦後の1951年です。

1951年株式会社ノーリツ創業
1952年ガスの原料が石炭から石油に切り替わっていきました。
1957年ハーマン社が電池式点火機構のホーロー製コンロ・レンジ・オーブンの開発。
ハーマン社ホーロー製2口コンロの開発。

 

1960年代初頭、東京五輪と共に家庭用コンロの原型が、この頃完成

1960年代初頭、東京オリンピックの開催に合わせ、公団を初めとする建設ラッシュを背景に、当時画期的なガスコンロが発売されました。家庭用コンロの原型が、この頃にできました。そしてこの時期にやっと一般大衆に「コンロ」普及し始めました。
1962年:東京ガスのカタログにリンナイ2号ガスレンジを掲載。
1963年:リンナイ社がコンロ兼用グリル付ガステーブルコンロを開発。
1966年:ハーマン社がグリル機能付きコンロを開発

1969年(昭和44年):卓上カセットコンロが普及

1969(昭和44年)年:岩谷産業が卓上カセットコンロが話題を呼び大ヒット商品となりました。・・・焜炉というのは「持ち運びができる炉」という意味なので、これこそが本当の「焜炉」かもしれません。
1970年代には天然ガスの輸入が開始される。

このころからコンロが段々コンロではなくなり始めます。

焜炉は持ち運んでいたわけですから、それが据え付いてガスを使うようになり、シンクと同じ場所に設置されさらにオーブンの役目までできるようになって「ガスレンジ」と言う言い方が広まったのも確かです。
ちなみに英語でもオーブンやレンジなど様々な機能が付いたコンロは”gas stove”(ガス・ストーブ)ではなく”gas range”(ガスレンジ)と呼ばれます。

1970(昭和45年)年代システムキッチンの利用が始まる:ビルトインコンロも利用開始

リンナイ社がセパレート型ビルトインレンジの商品化(業界初)
システムキッチンの普及に伴いビルトインコンロがシェアを伸ばし始めていきました。

1984(昭和59年)年:リンナイ社が安全装置付きのコンロの開発(プッシュ点火方式、立ち消え安全装置の標準搭載
1990年代:リンナイ社が見た目が美しいガラストップコンロの導入開始。
1998年(平成10年)以降:平成10年以降は、システムキッチンは徐々にシェアを伸ばし、新築のキッチンの半数強を占めるほどになっていきました。
2001年(平成13年):ノーリツ社はハーマン社、ハーマンプロ社との業務提携と出資を行い、ハーマンプロ製のビルトインコンロ、食器洗浄機を発売。
2001年(平成13年):リンナイ社がガラストッププレートのカラーバリエーション化
ちなみに、「ビルトインコンロ」を欧米人に英語で伝えようと思った場合、ビルトイン・ストーブとかbuilt-in cooking stove(ビルトイン・クッキング・ストーブ)で通じるようです。

ヨーロッパでは早くから電気コンロが普及している

2003(平成15年)年の時点で新しく販売されたコンロのうち6割以上が電気コンロだったとのことです。
寒い地域では気候の厳しさから、住宅の高気密・高断熱化が必要なため、キッチンでも燃焼によるガスや水蒸気の発生がなく頻繁な換気の必要がない電気機器が主流となっています。欧米では魚はオーブンで調理するのが普通でグリルを組み込む必要がないとのことです。
ちなみにヨーロッパ人は今でも電気コンロのことを(electric cooking stove)(エレクトリック・クッキング・ストーブ)と呼ぶそうです。

日本で「コンロ」と呼んでいる言葉をなぜ欧米では「ストーブ」と呼ぶのかということを調べていくと、とても深い人間の営みと歴史を感じてしまった今日この頃でした。
ちなみに、大問屋株式会社では、リンナイパロマの最新式のビルトインコンロ激安価格で販売中。

https://www.kyutouki-oodonya.jp/product/builtinconro/items/